図書情報 「市民協働の考え方・つくり方」他


こらぼ大森協働支援施設のさかいです。

 だいぶ秋の気配は深まってきましたが、桜も花みずきも、まだ冬枯れの気配がありません。そのおかげか、半月遅れで種まきしたグラウンドの冬芝は順調に育っています。

 読書の秋の今回は、「協働」について考える2冊の本をご紹介します。どちらも、読みやすい本です。

まず、1冊目は、「市民力ライブラリー 市民協働の考え方・つくり方」(松下啓一著)です。著者の松下啓一さんは、現在は相模女子大で社会自治論などを担当する一方、特定非営利活動法人ひらかた市民活動支援センター理事としてNPO活動も行い、各地の自治体の「協働」推進に携わっています。さらに、26年間横浜市職員として、市民と一緒に活動した行政職員の経験もお持ちです。

本書では、1.協働とは何か(協働の定義)、2.なぜ今協働なのか(協働の覚悟)など、「協働」についての基本が、まず順を追ってていねいに説明されます。その上で、行政との協働とは「一緒に汗を流すこと」だけではなく「一緒にやらない協働」もあると語ります。市民が独自に行ってきた活動が、次第に公共的課題として「熟成」していく場合があります。このような公共に熟成していく市民活動を、「行政の土俵」に上げて行政のルールである公平・公正の理論で縛ってしまわず、見守り、支援することも「協働」の一形態であるというのです。この「一緒にやらない協働」をする市民活動まで広く意識すると、自治体のなかで「協働」と無縁の部署はなくなるそうです。しかも、「行政の土俵」の外に、これらの活動がたくさん重なっていくことが、豊かな「まち」づくりにつながっていくと語り、そのための、「ルールづくり」の必要性と、よりよい「ルール」を考察しています。

Photo 2冊目の「私のだいじな場所‐公共施設の市民運営を考える」(協働→参加のまちづくり市民研究会編)では、松下氏の語る「行政の土俵」の外にある「公共」施設を中心とした、市民が運営する「公共の場」を取り上げて、よりよい豊かな「まちづくり」について考えています。2007年出版のため、すでに活動を終えた事例などもありますが、「公=官」ではないという視点を持って、公共の場とその担い手を考えます。しかし、けして「官か民か」の二項対立ではなく、こちらも、よりよりルールづくり、まちづくりを考えています。役割分担してしまった、行政と市民ではなく自分たちのくらすまちをより住みやすい場にするために、それぞれが「公共」を担っていくパートナーとして、どのように関係性をつくり、持てるものを出し合っていくのかを、一つ一つの事例=地域の特性を通して考えていくことができます。随所に挟まれる書き手たちそれぞれの個性の見えるコラムも魅力的です。

発展途上の「協働」は、他所から与えてもらうものではなく、よりよい地域に暮らしたいと願う一人ひとりが工夫と試行錯誤を重ねながら作り上げていくものなのだと言うことを自覚させてくれる2冊です。ぜひ、こらぼ大森に来て、手に取ってみてください。

★こらぼ大森情報交流室Ⅰの本の借り方★

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大田区区民活動支援施設大森「こらぼ大森」

情報交流室Ⅰ:03-5753-6560